いつでも春にゃんにゃん

伊藤さん　４８歳男性。
たまに行くバーの常連で　時々　顔を見かけた事がある人だった。

大阪へ出てきてから　地元のバーへ行く機会がなく足が遠のいていたが　先日　親友と会う機会があり２人で行くことに・・・・・

店内には　常連が三組ほどいた。
親友は　この店に足蹴に通っていたため　伊藤さんと会う機会も多かった。

ママは気さくな中年の親しみやすい女性。

霊感が人一倍強く今までの体験談を話し始め　少し背中が凍るような思いで聞いていた。
その時　ママが一言言った。

ママ「今日は　伊藤ちゃんの月命日だね。」

親友「あ～そうよね。亡くなって何ヶ月になるの？」

ママ「今日で五ヶ月」

はるか「えっ！！　その人ってよく飲みに来てた人？」

親友「そうそう亡くなったのよ～　息子さんに刺されて・・・」

はるか「えっ！！　刺されたの？」

ママ　「息子と折り合いが悪くて　口げんかになったとき　脅しで持ってきた息子のナイフを見て　奥さんがびっくりして止めに入って　弾みで転倒して　ナイフが伊藤ちゃんのわき胸に刺さって。。。。
息子は　障害過失致死で殺人にはならなかったけど　今　刑務所の中。
伊藤ちゃん　息子のことホントに可愛がってたから　思い残すことや無念さがいっぱいあったと思う。」

常連の客「今日は月命日だから　あいつの好きなレイニーブルー歌うわ！　ママ！　伊藤の席にタバコつけてあげて～」

ママ「分かったよ～　有難う。伊藤ちゃん心配しなくていいからね。あんたのことみんな思ってるよ！」
そういいながら　火をつけはじめた。

常連客が　レイニーブルーを歌い始めた。

♪人影も見えない　午前零時　電話ボックスの外は雨・・・・♪



店内は　伊藤さんへの追悼の気持ち　皆それぞれの思いを寄せ　レイニーブルーを聞いていた。

店の中は　伊藤さんのためにつけた　マルボロの煙が立ち込める。

時折　鼻につく　洋もくのタバコの匂い。

歌も　終盤に差し掛かろうとしたとき　親友が言った。


親友「伊藤ちゃん　みんなで一緒に飲もう～～　かんぱ～～～～い！！」



すると　今まで店内がタバコの匂いで立ち込めていたのに　急に線香の匂いが漂い始めた。

ママがつけたの？　いや・・・違う。

気のせいか・・・・・・


はるか「ねえ～　線香の匂いしない？」

親友「私も言おうか迷ってたんだけど・・・・する・・・」

ママ「あ～最近　この歌かけたらたまにあるんよ。お店に来たんやね。。。。。」とポツリ。



歌が終わり　何も言えない空気の中　ママが言った。


ママ「伊藤ちゃんが　多分望んでたであろう通りに　息子は殺人罪にはならなかった。
酔っ払った父親を止めるため　息子が正当防衛で誤って刺したということになり刑が軽くなった。
後は私たちに　息子と嫁を頼むって生前から言ってたように　きっと　それだけが心残りだったんだと思う。
でも　こうやって姿見えなくても　私たちのところに来て見守ってくれてるんよ．伊藤ちゃんは・・」

はるか「。。。。。」

そして・・・・零時が過ぎていた。

線香の匂いはいつの間にか消えていた・・



何か見えない力はあるのかもしれない。
人の基準では　想像出来ないような事はこの世にあるのかもしれない・・・


伊藤さん！
みんな　あなたが大好きだよ。
いっぱい　いっぱいやり残した事あるよね。
でも　役目はあなたが生きれなかった分まで　生きてる人が頑張るから。だから　見守ってあげてね。

伊藤さんあなた　ホントに愛されてるよ！







ご冥福を　お祈りします。